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二葉亭四迷の明治四十一年 (文春文庫)
 「二葉亭四迷の明治四十一年」。タイトルを聞いてピンとくる人はどれくらいいるのだろう。明治四十一年という年がいったいどのような意味を持っていたか、それは二葉亭四迷の実像と同じくらい私達にはベールに包まれている。本書はタイトルからして謎解きの物語である。

 二葉亭四迷は、教科書で知られているような言文一致体を完成させた文豪、というのは極めて多面的な性格を持つ彼の一部の業績でしかない。ロシア語学者、ジャーナリストであり、完全主義と優れた事務能力を持ちながら、職や住居を転々とする優柔不断な男、都合の良いときだけ坪内逍遙に泣きつく不義理な弟子。常に現状に満足せず、不安を抱えて焦っていたその姿は、まさに明治という時代を体現していた。

 有名な処女作「浮雲」は未完であり、「其面影」「平凡」といった諸作も頼まれて嫌々書いたものである。文学者たることを忌み嫌い、むしろ大陸に渡って女郎屋をすると放言していた。

 そんな二葉亭が終焉の地ロシアへ向かったのが明治四十一年である。この年、夏目漱石は帝大を辞め朝日新聞社の社員となり、石川啄木は借金だらけの苦しい生活の中で膨大な短歌を作り、時代の波に乗り遅れた川上眉山は命を絶つ。偉大なる明治は大きな転換点を迎えていた。

 読み終えたとき、そこには生き生きとした明治の文士達の姿が立ち上ってくる。

 


文學ト云フ事18「浮雲」(二葉亭四迷)


二葉亭四迷 動画


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二葉亭四迷 情報


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