クライマーズ・ハイ [DVD] |
原作で感銘をうけましたが映画を見損ない、待った挙句の映画DVDが不完全燃焼でした。
そちらで残念レヴューを書いた際 多くのレビュアーがTV版を絶賛しているのを知っていましたが 所詮 テレビだし今さらなぁ...という気がして買うのを控えていました。 が なんとも気がかりで今回購入しました。 今 観終えて感動です。 何回も涙しました。 原作の源流に忠実に物語が進み、これでもかと言うくらい文句のつけようのない俳優陣。 まるで俳優のひとりひとりが「クライマーズ・ハイ」に陥ってるかのような完璧なキャスティングです。 なかでも佐藤浩市は原作のなかの悠木そのものでした。 日航機事故とクライミングというまったく異質の題材を「クライマーズ・ハイ」という 心理現象で繋ぐ...という映像化のむずかしいと思われる原作に よくもここまでたどり着いたとNHKに脱帽です。 悠木と燐太郎のクライミング・シーン。 ふたりを繋ぐアンザイレンに悠木の家族、過去への心情が十二分に表されていて おそらく比べ物にならない費用をかけたであろう映画をはるかに凌ぐ出来でした。 映画を観て「クライマーズ・ハイ」こんなもんか...と思われたかた。 今からでもTV版をお薦めします。 決して外しません。 |
出口のない海 [DVD] |
静かな映画です。派手な戦闘場面もなく、家族や想人、戦友との別れなどが、静かに淡々と描かれ
てゆきます。全編、派手な悲壮美で貫かれた『男たちの大和』を観た直後に、劇場に足を運んだ作 品で、『大和』のような劇的な感動を期待していたために、正直、初見の際はかなり肩透かしな印 象を持ちました。 確かに、回天と云う兵器の複雑な操作を克明に描くことで、一人の人間をその部品の一部と化して ゆく冷酷さを強調したいのか、主人公の魔球にかける熱情の日々とそれを無残にも奪い去ってゆく 戦争というものの理不尽さを描きたいのか、その時々で物語の中心点がブレ、映画として幾分、散 漫な印象を受ける欠点は承知の上で、それでもなお、自分がこの映画をリピートする頻度は非常に 高いです。あれほど共鳴した『大和』はDVDで一度しか観てはいません。 物語も出演者たちも、劇伴や映像、装置にいたるまで全てが真摯な映画だと思います。真摯であれ ばこそ、本当の意味での静かな感動がそこにあります。後からじわりとくる類の感動です。 人間魚雷という不気味な響きの兵器に乗り、人知れず南冥の海に消えていった幾多の人々。是非、 ひとりでも多くの人に観てもらいたい大切な映画です。 |
出口のない海 特別保存版 (初回限定生産) [DVD] |
過去の悲惨な記憶を風化させてはいけない。そんな想いを全編から感じる。
小畑を演じる黒田勇樹の短髪姿がチョット意外だった。小畑は入営前に「学生は勉学が本分…。職業軍人にはなれない」と言ったが、当時の若者も自らの、そして未来の社会を信じて勉学に励んできたはず。国家の都合で戦争にかり出された若者は、国や家族を守るためとはいえ、少なからず無念を抱いて死んでいったろう。 唯一の休暇で自宅に帰った並木は、小畑のグローブを受け取るが、帰隊後キャッチボールをする時グローブに小畑の名前が映し出され、あの穏やかな笑顔が浮かんで涙を誘う。 ラストでは、並木が残された者に託した想いが読み上げられる。エンドコールを眺めながら死んでいった者の無念と残された者の絶望を想い、そして絶望からはい上がって、今の日本の礎を作った偉大な先輩たちを想った。 並木の恋人として美奈子を上野樹里が演じているが、この手の映画ではどうしても女性はワキとして抑えた演技を要求される上、女性的な美しさを制限されるため、あまりいい印象はない(特典DISKの制作発表ではずいぶん派手なドレスだったが)。 並木の投手練習に元巨人の鹿取義隆が当たっている。鹿取は明治大学OBであり、この映画の趣旨に賛同したから。並木がサイドスローなのはそのせい(?)。 魔球を完成させた時の並木の青年らしい笑顔に泣かされた。 メインテーマのピアノと主題歌「返信」が似ていると思ったが、特典映像で加羽沢美濃さんが両曲を同じような手法の、コード進行も似ていることに感動したと語っていた。この映画を見た二人の音楽家が同じような想いを共有して、似た曲ができたということ。 |
半落ち [VHS] |
「半落ち」を映画館で観ました。今まで映画館でここまで泣いた映画はない!!ってぐらい、泣いちゃいました。命の重さ・生きることの大切さを改めて思い知らされました。絶対感動するので、ぜひぜひ見てください!!! |
ヒップ・クルーザー |
高校生の頃渡辺貞夫のラジオ番組で向井さんの「コーラルアイ」を聞きました。なかなか音源にめぐり合うことがないまま約20年。ついに私のもとにやってきた! 向井さんの伸びのあるハイトーンとスーパーテクを楽しめる良質なフュージョンアルバムです。 かつてインタビューでフュージョンに飽きちゃったんだよねって言って、こっぱ難しいことをやり始めた向井さんですが、ポップに聞けるフュージョンもたまにはやってくれないかなぁ。 |
臨場 (光文社文庫) |
本作は、検視のスペシャリストである倉石調査官を主人公に、
彼が臨場する現場で起こった様々な印象深いドラマを描く短編集です。 おそらく著者は法医学の取材をかなり行われたようで、 変死体を分析する緻密さは、あたかも読者もその場にいるかのようなリアリティがあります。 事故や天変地異で命を落としたのではなく、 殺人あるいは自殺で生命が絶たれた以上、 その背後には様々な思惑に満ちたストーリーが控えている。 現場の確かな物証と人間心理への鋭い洞察から、 倉石は実に鮮やかな真相を導き出して見せます。 とりわけ印象的だったのは、中盤の「餞」と「声」です。 年齢も境遇も異なりますが、 いずれも女性の哀しい心理が描写されていて胸を打たれました。 ただし、終始気になったのは、倉石の上司に対するガサツな言葉遣いです。 あれではとても組織人としてやっていけないのでは…と、 少々イライラさせられました。 |
第三の時効 (集英社文庫) |
男(刑事)達の汗やアドレナリンがにおい立つ文章が、この作品の最大の魅力かも知れません。
おそらく、良い小説というのは、ただ文章を読むだけで映像が浮かび、音の聞こえるようなものではないかと思うのですが、それ以上に素晴らしい小説は「におい」が伴うのではないかと思います。それほどまでに生々しくリアルな刑事達によって、しかしちゃんとドラマチックな展開で事件は解明されていきます。 謎の解明部分もとても面白く、引き込まれます。表題作以外のお話も外れなく面白いです。一つの事件に対して「主役」となる刑事がおり、それぞれ魅力的な個性を持ちつつもしっかりと感情移入させられるので非常に読みやすいです。 短編一つ一つの短さもちょうど読みやすく、かつ、一つのお話にとって過不足ない分量で綺麗にまとまっており、横山秀夫さんの力量恐るべし、と思いました。 |
クライマーズ・ハイ (文春文庫) |
最近映画化もしましたね。
横山秀夫の作品は圧倒的に警察小説が多いのですが、「クライマーズハイ」は地方新聞社が舞台です。これだけある意味異色作になるのでしょうか?とはいえ他の作品でも新聞記者はよく出てきますし、作者自体が地方新聞記者出身なので、作品のリアリティーたるやすごいものがあります。読み始めた時から自分がずっと新聞社の喧騒の中に立たたされているような感覚を味わいました。 つい先日読売新聞の元事件記者の人としゃべる機会がありましたが、「御巣鷹山の墜落機事故のようなヤマを踏んだ記者はほとんどいないよ」と言ってました。それくらいインパクトのある現場を実際に見た作者だからこそ、その地獄のような日々(堕ちた現場ではなくそれを日々記事にしていく新聞社もまさに地獄絵図)を見事に書ききれたのでしょう。新聞を作るということがこれほどエネルギーのいることだとは、正直驚きです。 山崎豊子の「沈まぬ太陽」や飯塚訓の「墜落遺体」とはまた違った角度から御巣鷹山を見ることができたのはいい経験だったと思います。改めて飛行機事故で亡くなられた方々のご冥福をお祈りいたします。 |