岸辺のアルバム (光文社文庫) |
とある電話から主婦から「女」を意識させられる(30代後半の常識的な)妻、英語を学ぶ事(アメリカからの留学生を教師とし、付き合う事にもなる)から今の生活からの抜け出す事に期待する(大学生の)娘、仕事一筋の(接待ゴルフも、外国局地への単身赴任も辞さない、40代の)夫、大学受験を控える勉強は出来ない(良く言えば硬い、悪く言えば視野の狭い)弟の平凡な4人家族が迎えるそれぞれの思いが家族という立場にどう波及するかを描いた「ドラマ」です。
今の感覚で捕らえるならば非常にありふれた(きっとその当時もありふれていたと、私は思いますが)事件(不倫や強姦、受験失敗に早期退職【リストラ】)から家族をどう捕らえるのかを、その人物に出来うる限り沿った視点とその視点から見た細かな描写を丹念に描く事で、ドラマを響くドラマに変えています、説得力があります。 正しき事は、誰が、どんな人が言っているかに価値が有ります。正しい事を言うだけなら小学生でも、死刑囚でも言えます。説得力を持たせるには、その発言者がいったいどんな事をしてきたのか?普段どんな生活をしていたのか?が重要なのだと私は思います。全てにおいて正しい人間はいません、誰でも叩けばホコリが出ます。それでもなお、ホコリが出ない様努力している人かどうか?が重要なのではないか?と思うのです。家族に対する幻想それぞれの幻想におのおのがどれだけの執着があるのか?を感じさせるドラマです。 ドラマになるにはきっかけがあり、ドラマを進める為には「エネルギー」がいります、私が考える山田 太一さんのドラマを進める「エネルギー」は「おっちょこちょい」だと考えます。愛すべき「おっちょこちょい」それが高校生の息子です。彼が高校生という設定に今と当時の違いを感じます。 |