偽書「東日流(つがる)外三郡誌」事件 |
「内容は五流ながら規模では最大」の偽史として悪名高い「東日流外三郡誌」事件の記録。著者はひょんなことから係わることになった「東奥日報」記者。さすがに当事者として係わった物の記録は克明、筆致は面白く、読んでいるものに休む間を与えず引き込んで行く。
それにしても何故明らかな偽作に引っかかるのか。アカデミーの世界の人間が係わりたがらないこともあるが、印象深いのは大手メディアの情報リテラシーの無さ。安本教授の「この優しい精神は危険である。常識性をはじめから無視する人、あらそいを厭うよりもむしろ好む人は、この優しさに乗じて、人心を支配する。」との指摘が痛い。 |
幻の二代藩主・津軽信建―半穂独言集 |
津軽の梟雄と呼ばれた大浦(津軽)為信は初代津軽藩主となり、その後は為信三男の信牧(ノブヒラ)が継いだ。嫡男の信建(ノブタケ)が跡を継がなかった理由としては、信建の烏帽子親が石田三成であったこと、豊臣秀頼の小姓として仕えていたこと、信建嫡男の熊千代を巡って父為信と対立したこと(天童事件)、が挙げられている。
しかし最近の研究で、信建は2代藩主として父の跡を継いでいたのではないかという説が浮上してきている。信建と親しかった京の公家・西洞院時慶の日記や、信建が奉納した経典等からその謎に迫る。 東北地方戦国マニア向けの作品といえよう。 |